ココアの約束


ほんの些細なコトで
ちょっとだけ機嫌を悪くした私を後ろからじっと見てることなんて
とっくに分かってるけど

もうちょっと意地悪をしたくて
そのままでいたら

目の前にコトッと置かれたのは
あったかいココア


ちゃんといつもの甘さで
ちゃんといつものあたたかさで
ちゃんといつもの笑顔で


「ごめんね」  それが約束



クリームなんてのっていなくたって
ホットミルクに混ぜるだけのどこにでもあるなんてことは無いココアだって
とっておきに変わるのはきっと
ふたりでいるから。


ココアが飲みたくなったらまた、
ちょっとだけ機嫌を悪くしようか。

きっと今日みたいにまた、
ちょっとだけしょぼんとした笑顔で最高のココアを作ってくれるはず。





ひとりとふたつ


「寒くなってきましたね」


「寒くなってきましたね」





冷たい風がちょっとだけ強くふたりの背中を押して、
いたずらに髪をかき乱す。
少しだけクセのある柔らかい猫ッ毛のボクと
まっすぐでそれでいてふんわりと優しく揺れる栗色ショートカットのキミと
ふたり並んで冬に近づいた秋の夕暮れを歩く。



「寒くなってきましたね」

「寒くなってきましたね、では、、、、

           ふたりくっついて暖をとりましょうか」





みぎてとひだりて。

かたとかた。

くっついて、おなじ歩調で、ゆらゆらと歩く。





「あたたかくなってきましたね」

「あたたかくなってきましたね」


そう言って、ふわっと笑ったキミのことがダイスキなんだ。






「ねぇ知ってる?ふたりでいっこになれば、あたたかさも二倍になるんだよ」







だからずっとふたりでいっこであしたもあさってもずーっとさきのみらいも


ずっとずっとずーっとキミとひとつで。







君、そう言って笑った夜の日。



隣にいる、あたたかい存在に

視線は丸みを帯びた明るい月のまま、二人並んで歩いた小道。

そっと呟いた。



「月が、綺麗ですね」



怪訝な顔をされるか、笑われるか、バカにされるか、そう思いつつしばらく息を潜める。
何の反応も返ってこなくて、聞こえなかったのかと少し安堵にも似たため息をついた。



不意に。
ぎゅっと右手を握られて思わず隣にいる君を見下ろすと

「そうですね、私も」

満面の笑みで、少しだけからかうように、覗き込まれて。
不自然な敬語で台詞のように棒読みで返事が返ってきた。
その時、気付いた。
聞こえていた、分かっていた、言葉の意味が。
途端に恥ずかしさで情けなくなった。


ふふふ。
楽しそうに笑われてなんともバツが悪い顔をしながら歩みを早める。

君の手にぎゅっとチカラがこもる。


そして、




「私もだよ、
 
               I love you   」




月がみていた。
きっと笑いながらみていた。

漱石はきっと呆れるほどのロマンチストだ。

でも、
時々月が綺麗だと呟いても、それはそれで可愛らしい自己主張なのかもしれない。



僕が愛しているのは夜空に浮かぶ月でも
ましては漱石の言葉でもない。

隣でいたずらな微笑で僕をどうからかおうかと思案している大切な君だから。




「月が綺麗ですね」



誰より君へ。





翔る星。


ずっと、何処かにそれは存在してた。
ずっと、触れることも聞くことも見ることも叶わなかったけれど
ココロの片隅で確実に存在してた。




おはよう。って言って、
おやすみ。って言って、





馴れ合うことを拒絶されてから、
笑いかけることが出来なくなった。
血の繋がりなんてなくたって、
身体の一部になっていたはずだと信じてた。
自惚れだと認めたくなくて、離れてしまおうと決めたのは自分。



アイタイ。って言って、
アイシテ。って言って、




いまさらこんなにも苦しくなるなんて知らなかった。

苦しくて悲しくて寂しくて
もう思い出せない笑顔が優しくて

泣きじゃくる私を抱きしめたあの腕を思い出して、泣いた。
雨の日に見た悪夢から救い出してくれたあの言葉を思い出して、目を閉じた。
あの窓から見た海に降り注ぐ光の梯子を思い出して、願った。
突然触れ合ったあの一瞬の唇を思い出して、笑った。


消えるはずの思い出が鮮明になる。
色褪せたはずの映像がカラフルに戻ってゆく。




アイシテた人がアイシテる人へ。




もう一度アナタを困らせるの

ねぇ、私のこと好き?









どうせまた捨てるなら、もう拾わないで。

形が残らないように、
砕いて潰して焼いて跡形も無いくらいに、
立ち直る事が出来ないように、
その手でココロを潰して。













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プロフィール

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ひとみしりのさみしがりや。
だけど、ひとりがすき。

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